私は2日に1回は耳掃除をしないと気が済まない。耳かきにはかなりこだわりがあって、大人になってからはずっと“馬木の耳かき”を愛用している。
馬木の耳かきは知る人ぞ知る、手造りのちょっとお高めの耳かきで、普段はだいたい巣鴨のとげぬき地蔵の境内に屋台を出して販売している。それから都内で行われるお祭りや縁日にも出店している。
私が子供の頃から、駒込・天祖神社の縁日には必ず馬木の耳かきが来ていたので、耳かきを造る工程をよくじーっと見ていた。
今、耳かきを造っているのは2代目の息子さん(写真左)で、私がじーっと観察していたのは初代(写真中央の白髪のおじいさん)である。その風貌から、子供心に「こういう人を“仙人”っていうのかなー。」と思っていた。当時、仙人といろいろ話をしたように思うが、残念ながら内容は憶えていない。
一度聞いたら忘れられない口上は、
「造物主の忘れ物
お目々は涙で洗えます
お鼻はくしゃみで通ります
お口はつばきも舌もある
お耳だけにはなにもない」
この馬木の耳かきの、先端のカーブ具合、薄さ、大きさは絶妙で、耳が痛くならない。ただ、耳かきとしては結構高いので、子供時分には買える訳もなく、大人になってからやっと手に入れることができた。
価格は種類によってまちまちだが、節のある竹を使った手頃なもので1本1,550円(大中小あり)、耳掃除の特別に好きな人用1本1,980円、スス竹を使ったものは1本2,980円なんていう具合だ。スス竹はより丈夫だとのこと。
1,550円のものでも、1本の片方が普通サイズで、もう片方が少し大きめのダブル耳かきになっている。手造りなのでもちろんカスタマイズも可能で、「もうちょっと細身に、カーブきつめで」なんてリクエストもできる。
これを使ったら、薬局やコンビニ、みやげもの店の耳かきはもう使えない。
アメリカにはこういう木や竹でできた耳かきがないそうで、ペンシルバニア州の知人は耳かきを非常に喜んで買って帰った。日本のお土産としても好評である。
耳かき好きな方、巣鴨とげぬき地蔵や、都内の縁日では“馬木の耳かき”を要チェック。