冬の寒さに堪え、この日を心待ちにしてました。半年ぶりの「立川談志 一門会」@練馬文化センターへ。昨年7月に、よみうりホールで行われた、立川笑志・真打昇進記念の一門会では、喉にポリープができていた家元、絞り出すような声で「田能久」をやったが、かなり聞きづらかった。最後に「しばらく休みます。これが最後の高座かもしれません」なんて言って、その後は独演会、ひとり会は取りやめ、一門会を中心にジョークあれこれ、みたいなことで高座を乗り切っていたようだ。毎年欠かさず聞きに行っている年末のよみうりホール(別名、芝浜の会)も、昨年末はなかった。家元、大丈夫なのかしら、今日は落語をやるのか、やらないのか。期待する気持ちと、心配な気持ちが半々で出掛けた。
最初に出てきた談修が、「みなさま、今日は談志復帰記念ライブへようこそおいでくださいました」と言った。おっ、今日はやるらしい、とニヤリ。談修は「長短」のあと、「茄子と南瓜」を踊った。茄子と南瓜がケンカして、夕顔が仲裁に入るという不思議な唄と踊り。
2番目に談笑。「うちの師匠も政務次官の時に酔っぱらって記者会見してクビになってるんですよ。中川さんも一門なんじゃないか?」に笑う。演目「薄型テレビ算」は、「壷算」を談笑風にアレンジした噺だが、騙される電気屋の店主は「こう見えても祖父の代は、陶器屋をやっていて壷なんかを扱っていたんですよ!」と、壷算で騙された店主の子孫ということになっていて、よくできてます。
次が柳亭市馬。小さんつながりで一門会にゲストで登場。立川流しかチケットを買わない私にとって、一門会に来るゲストは密かな楽しみとなっている。これまでに一門会に出たのは昇太、鶴瓶、喬太郎、花禄など、独演会だったらチケットが取りづらい人ばかり。市馬さんは初めて聞いたが、実に声がいいです。「堪忍袋」の威勢のいい夫婦喧嘩も、下げに使った「憧れのハワイ航路」も聞き惚れました。うまい!市馬・談春・三三(すごい組み合わせ!)の三人集のチケット、すでに完売なんですね……次は絶対狙おう。
仲入りのあと、松本ヒロのスタンダップコメディ。元ザ・ニュースペーパーのメンバーだった人で、歴代総理大臣の形態模写が持ちネタ。安倍さんは特徴をつかむのが結構難しく、1年がかりでやっと真似できるようになったら総理を辞めた。福田さんは、最初からやる気がなさそうだったので、練習もしなかった、とのこと。で、この日のネタはもちろん麻生さん。かなりブラックで、本人も言っていたがこれはテレビには出られないはず。笑わせてもらった。
さてさて、家元登場。座布団に座ってお辞儀をしたあと、無言のまま喉を指差し、バッテンを作る。そしてジェスチャーを始めた。しばらくは何を言おうとしてるのかよくわからなかったが、途中から小咄を手話みたいにやっていることに気がつき、ネタはおそらく、「笑い茸」の中に出てくる寄席のひとこま、<おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に…(中略)…びっくりしたおばあさんが思わずぶぃーとおならをしたら、それが山にこだまして、おじいさんは柴を刈らずに草刈った(くさかった)>だと思ったけど、違うかな。ジェスチャー小咄のオチがついたところで、ちゃんと話し始めた。昨年7月よりも声が出ていてひと安心。それでもまだ調子がいいという感じではなかった。演目は「つるつる」。気力と体力が衰えたとしても、胸から自然に言葉が湧き出てきて、落語を演じてしまえるんじゃないかと思った。そして私はやっぱり落語ファンじゃなくて、談志ファンなんだ。こんなおもしろいおじいちゃんはいねえよ、それでいいじゃん、とも思った。誰がなんと言おうと、私は談志が好きです。復帰マンセー。
談志は談志。
その様を見せ続けてくれればOKです。
見続けますよ!