相互リンクしていただいている、「ネット随筆」
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で、夏目漱石の『硝子戸の中』という連載が始まりました。
漱石が身の回りの出来事や思い出を記した随筆で、それらは自宅の硝子戸から見える、単調で狭い世界に時々現れる事柄や人物について淡々と語ったものです。
最初にこのタイトルを見て「あっ」と思いました。私がいつも散歩をするとき、他人の家の建物や窓硝子を観察してはその中にある生活を少し想像していたからです。しかし本文を読み始めると、それは家の「中」から硝子戸の「外」を見ている漱石の視点であることがわかりました。
病気で床に伏せってばかりいてもこれだけの連載が書けるなんて、やはり漱石は天才だなぁと改めて感じます。
私の家はすべてサッシ窓ですが、街を歩いていて、サッシではない木製の窓枠を使った古い家を見かけることがあります。実際のところは防音やすきま風などの点で不便なのかもしれませんが、サッシ窓にはない風情があって好きです。そんな窓にはたいてい、今ではあまり製造されていない変わった磨りガラスが使われていたりして、憧れが増します。
磨りガラスの向こうには、ぼんやりと花瓶や人形、鉢植えなどのシルエットが見え、その家の生活を想像させます。といっても窓をじっと見ているわけではなくて、通り過ぎざまに一瞬思いを馳せる、といった程度ですので誤解のなきよう。
時にはゴージャスなシャンデリアが見えたり、台所道具のザルや鍋が所狭しと並んでいたり、陶芸作品のギャラリーのような窓もあります。ところで、私の家の窓を他人が見たら、何を思うでしょうか。