り屋があったのだが、1ヶ月ほど前からシャッターを閉ざし、中で商
品や什器の片付けをはじめていた。そのくすり屋の両隣りの商店も数
年前に閉店して、あとに新しい店舗が入るでもなく、その一角がさら
に暗く寂しくなってしまった。
すぐ近くに大手チェーンのドラッグストアが2軒、それに処方箋薬局
も2軒と、立て続けにできてしまったから、古くからの個人商店では
太刀打ちできなかったのだろう。実際、私もそのくすり屋を利用した
ことはなかった。木枠のショーケースの上には折鶴ランの鉢、壁のポ
スターは色あせ、今でも乳鉢で粉薬を調合してくれそうな白衣のおじ
いさんが奥にいた。そのまま江戸東京たてもの園に移築しても違和感
のない雰囲気だった。
先日、前を通りかかった時、半分シャッターが開いていて、ガランと
した店内をおばさんが掃除しているのが見えた。もうすっかり商品も
什器も処分してしまったと思ったら、すみっこに不要品と思しきもの
がいくつか置かれていて、その中に傘立てが見えた。
私の店にはまだまだ足りないものがたくさんあるのだが、そのうちの
ひとつが傘立てで、なかなか満足いくものが見つからないので、妥協
して変なものを買うよりは、なくてもなんとかなる、と開き直ってい
た。(お客さんにしてみれば傘の置き場がなく迷惑な話だ。ごめんな
さい)それで、ダメもとでおばさんに、「この傘立てを譲っていただ
けませんか」と声を掛けた。ほうき片手におばさんが出てきて、「ど
うせ捨てようと思っているものだから、どうぞお持ちなさい」と言う。
思いがけず、傘立てを入手。店に持ってきて、水洗いをしてホコリを
落としたら、まるでここに何十年もあったような顔で、入り口の脇に
ぴたりと収まった。

