2年ぶりぐらいだろうか、ずいぶん久しぶりに志の輔の高座を聞いてきた。いつもチケットを取るのに必死になるわけじゃないので、気がついたら売り切れ、ということが多いし、実際、必死になっても取りにくいようだ。この日も1300人入る中野ZEROホールという大きい会場が満席だった。
前座に立川メンソーレ「道具屋」。沖縄出身の4番弟子で、「メンソーレ」は沖縄の方言で「ようこそいらっしゃいました」なので、出てくるだけでご挨拶になるとか。
志の輔の最初の噺は「千両みかん」。気の病で10日も床に臥せっている若旦那。見かねた旦那が、倅と仲のいい番頭に悩みを聞いてこいと言う。陽気に尋ねる番頭に、若旦那が打ち明けた恋焦がれるものとは「みかん」が食べたい、ただそれだけだった。
それならみかんを買ってきますと安請け合いしたものの、時期は真夏の盛り。みかんなど出回っていない。ありませんでしたと言って倅が落胆して死んでしまったらどうする、お前は人殺しの罪に問われて磔獄門になると旦那に脅され、あちこちみかんを探しまわる。人づてに聞いて日本橋のみかん問屋に辿り着くと「ありますよ」という返事。
しかし、土蔵にしまっていたみかんを雇い人たちが調べると、すべて傷んでいてだめだという。そんなことを言わずにもっと調べてくれと食い下がる番頭。みかん問屋の大旦那自ら、ひとつひとつ調べていくと、たった1個だけ、傷みのないみかんが見つかる。その値段を尋ねると、「1個千両」だと言われてしまう。
真夏にみかんを買いに来る人はいないけれど、毎年、大量のみかんを土蔵いっぱいに保管し、結局は処分している。それはみかん問屋として「みかんはありません」と客に言わないための無駄である。その経費は莫大なもので、いくらでもいいからみかんを売ってくれと言われれば、千両とつけさせていただく、というのが理由だった。
番頭は飛んで帰ってそれを旦那に伝えると、倅の命には代えられないと、千両を出す。たった1個のみかんを千両で買ってきた番頭、それをうまそうに食べる若旦那。そして番頭は考えた………
最初、志の輔の衣装がとても派手で、笑点のこん平ちゃん(もう出てないですけど)みたいだなぁと思っていたのだが、噺を聞いているうちにそれが「みかん」色の着物で、ちらりと見えている襟元に緑、つまりみかんのヘタの色だ、ということに気がついてきて、やるねぇ、とニヤリとしてしまった。
仲入りのあとは「へっつい幽霊」。毎夜へっついから出てくる幽霊が「金出せ、金出せ」というのが、“幽霊の談志みたいなの”と言ってるのが笑えた。今日は風邪気味ということで喉の調子が悪かったようだが、それでも充分に魅力のある高座を堪能させてもらった。
それに気づくと見ているほうもうれしくなりますね。
MongoさんにいただいたDVDに入っていた、
「ママさんコーラス」のネタも好きなんですよ。
ああいう派手な演出もいいし、
じっくり聞かせる古典も引き込まれます。