30年営業してこられたというこのショップに、私が初めて伺ったのはもう10年ぐらい前だろうか。会社帰りに毎日2駅ほど歩いて帰っていたことがあり、その途中に三春堂があった。
陶器やガラス、金工、布などの美しい工芸作品と共に、壁面に大きな本棚が設えてあり、手工芸、建築、絵本などの新刊本を販売していた。
店の佇まいがまた素敵で、目白駅からほど近く、山手線の線路沿いだというのに、ここだけロンドンの街角のよう。ぎっしりとツタの生えた塀の奥に黒いドアの入口があって、窓からは暖かい白熱灯の光と、ガラス器がキラキラと光って見えた。店にはいつも猫がいる。
書店でない店でも本を販売できるんだと知って、自分もいつかこんなお店をやってみたいなぁと考えるきっかけとなった店である。以来ずっと、三春堂ショップは私の憧れだった。
といっても三春堂自体がなくなってしまうわけではなく、2008年からは目白通りをはさんで駅側にあるギャラリーで新たな活動をしていくとのこと。明日1月25日からは、「三春堂ギャラリー30周年展」が行われます。詳細は >>こちらから。
最後の営業日の夜、まだ電気の灯っていた三春堂に押しかけて、三春さんにお店の入口のツタを分けていただいた。ショップはなくなってしまうけれど、ツタはいろいろな方の手にわたって、あちこちで根を張るはず。
『三春の小路―めじろ、わたしの猫たち』安藤三春
(新刊)定価¥2,625(税込)
目白で暮らす猫たちの表情豊かな写真集です。題字はドイツ文学者の池内紀さん。三春堂の顧客のお一人だとか。アラーキーも三春堂でこの写真集を購入されたとのこと。旅猫雑貨店でも店頭にて取り扱っております。