2005年11月12日

■昭和30年代の本

明治大学にて『古書の世界6』第3回目の講座。はじめに、岡崎さん所有の古書を回覧しながらの解説。これが毎回楽しみ。新刊の本屋さんで売っていないものとしては、肉筆もの(色紙、原稿、手紙、日記)、アルバム、スクラップブックなどがある。私はそういうものを買ったことがないので、実物を興味深く見た。(あ、そういえば9月に南陀楼さんから戦前マッチラベルのスクラップを買ったことがあったのでした)

思い入れたっぷりに、丁寧に作った新聞の切り抜き帖などは、ちょっと滑稽なまでの生真面目さが感じられて面白かった。個人の日記やアルバムは、本棚の本に紛れて古本屋に流れてきてしまうのだろうか。自分の日記が、50年後に古本屋で売られていたら……ああこんな人がいたんだなぁと誰かに思ってもらえてうれしいのか、それとも恥ずかしいのかわからん。

今日のゲスト講師は、古書店「なないろ文庫ふしぎ堂」店主で、古本雑誌「彷書月刊」編集長でもある田村治芳さん。田村さんが若い頃、金子光晴にファンレターを出したら、丁寧な内容の返事が来たそうである。その後古本屋になり、その手紙を売ってしまったというのが可笑しい。これは身の回りの無名な人が、何を持っているかわからない、以外なところにすごいものが眠っている、という話。また、古本屋さんの現状についても詳しくお話してくださった。

業者間の交換会(市場)では、雑誌の付録、ブツは高い。古い車のカタログも人気があるそう。昔の電気製品の取説(取り扱い説明書)などはもし家に残っていたらとっておこう。いずれも昭和30年代頃の文化を知ることができ、デザインの面でもよい資料になる、とのこと。

講座のあと、今日は古書会館の即売展「愛書会」へ。場違いだったらどうしよう、とちょっとドキドキしながら地下への階段を降りると、会場の中も帳場も人がわさわさ動いていてビビる。見るだけ見てみようとクロークに荷物預けていざ。

ゆっくり見ていたら、おじさんに体当たりをくらった。他にも人を押しのけたり鞄をぶつけたり。なんか、妙に焦ってるんだよなぁ、おじさんたち。古本を前に我を忘れてしまうんでしょうか。怖いです。でも、めげずに棚を見ていく。購入した本は下記の通り。

■『美しいキモノ/61集別冊付録 染・織どくほん』
婦人画報社 昭和43年
付録とは思えないほど充実した内容。モデルには若き日の乙羽信子、倍賞千恵子、三田佳子、池内淳子などの姿が。

■『百万人のドライブガイド 東日本』
元文社 昭和38年
今日の講座で田村さんが車のカタログの話をしていたので、昭和30年代のドライブってどんなだ?と興味を持って見たら、車のデザインはもちろん、乗っている人のファッションもいい感じ。峠道のコースに掲載されている写真は、舗装されてない今にも崩れそうな崖だったりしてすごいものがあります。

■『8ミリの写し方』栗 敏雄
金園社 昭和41年
撮影・技術・録音・特撮・編集までを詳しく解説した424ページの分厚い実用書。今、中古で8ミリカメラを買う若者が結構いるみたいですね。

■『奥さま散歩』
朝日新聞家庭部編 朋文堂 昭和35年
この本、だいぶ前に元我堂で売ってしまって、ずっと探していたのでした。しかも!本の内容に合わせて新聞記事(昭和38年)とか、お店のチラシ、メニューの紙がたくさん挟まっています。今日の講座の新聞スクラップとちょっとかぶっていて満足。

■『下町手帖』辻野透
文化総合出版 平成2年
こころ惹かれました。読んでしみじみとする本。

■『飲み食ひの話』獅子文六
河出書房 昭和31年
装丁:芹沢けい介(けいは金へんに圭)
「タノシミは、飲むことと、食ふこと」読むのタノシミ。

■『随筆集 酒』獅子文六ほか
六月社 昭和32年
題字:幸田露伴 装丁:大久保恒次
奥付に「甘辛社」の小紙が貼ってあるので、「あまカラ」に掲載された文章をまとめたもの?

■『現代豆腐百珍』辻留 辻嘉一
婦人画報社 昭和37年
装丁:佐野繁次郎
湯豆腐をおいしく作るには、少量の塩を入れた白湯が煮立ったところに、3.5cm四方に切った豆腐を静かに入れ、「ただ、じっと見ていて、浮き上がる直前を掬いあげればよいのです。上手下手の問題でなく、注意力の強弱で決定されるのです。」四季折々の豆腐料理と、さまざまな調理法。

以上、8冊購入。古書会館を出て、三省堂の方へ歩きはじめたら、向こうから岡崎武志さんが!明治大学の教室ではなんとなく声を掛けそびれていたので、ここぞとばかりに話しかけてしまった。一箱古本市で賞をいただいたことも覚えていてくださって、かばんから先日100円で拾った新学社文庫『さざなみ軍記 他二編』(井伏鱒二著、新書だけど棟方志功の装丁)を見せたりしてしまう。まるで飼い主に獲物を見せる猫のよう。恥ずかしいよー。失礼しました。

そのあと古書センターでも3冊購入、天ぷら「いもや」にて昼食、天ぷら定食(いも追加)700円也。来週も講座が楽しみ。
posted by 店主かねこ at 22:38| Comment(4) | TrackBack(0) | □古本のこと | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いやいやいや、目に浮かびますね、興奮ぎみに獲物を見せるか猫さん。
岡崎さんブログにも登場されてますね、祝。
Posted by Mongo at 2005年11月14日 07:02
教室に金子さんがいることはもちろん気づいてましたよ。ホワイトボードに向って右端の席ね。古書会館でいい本買えてよかったね。セミナーで話したことを早速活用している。感心、感心。こんど終ったら、日月堂さんとも一緒に昼ごはんを食べましょうね。
Posted by okatake at 2005年11月14日 16:46
Mongoさん、ありがとー(泣)
鼻の穴が広がっていたかも……。


岡崎さん、書き込みありがとうございます。
(初日は遅刻しまして申し訳ありませんでした)
恥ずかしがりなので小さくなってますが、
セミナーも残すところあと2回、終わってしまうのが
惜しいほど楽しいです。
日月堂さんには予習をしに、近日お店へ行ってきます。

ご多忙で心身共にお疲れかと思います。
風邪などひかないようにくれぐれもお気をつけください。
今後ともどうかよろしくお願いいたします。
Posted by か猫 at 2005年11月14日 19:29
わあ岡崎さん直々の書き込みですね。

岡崎さん>
先日文鳥舎で声をかけました「古本 海ねこ」の夫でございます。
岡崎さん講義のおもしろさ、か猫さんよりちらり伺いました。
とっても楽しそうな場のようですね。
Posted by Mongo at 2005年11月14日 22:37
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。