2005年12月22日

■師匠の脳内へ

クリスマスギフトの発送重なり、徹夜でラッピング作業。朝一番でヤマト運輸に集荷依頼の電話を掛けると、担当者がびっくりしていた。いつもは夜、ぎりぎりの時間の集荷なので。11時、無事発送完了。24日着指定の皆さま、ご安心くださいませー。

午後3時、神楽坂のアユミギャラリーへ。明日からの写真展の搬入作業。ほとんどのメンバーが仕事で来られないので、21人分の展示を5人でこなす。水平の水糸を張る作業、メジャーで正確に間隔を計って、展示用のガイド枠を固定する作業、写真パネルの裏に両面テープを貼っていく作業など。今回は1人あたり9枚の写真×21となるため、結構大変だった。

私は6時で上がらせてもらい、中央線で一路、西国分寺駅へ。ここで古本海ねこの場生松さんと待ち合わせ、古本の心の師匠である岡崎武志さん宅へ伺う。25日(日)に品川で行われる、“フリマでミニミニ古本市”海ねこブースに、師匠が一箱分の古本を出品してくださるとのことで、その本を受け取りに行く海ねこさんに、オマケとしてついていく機会を得たのである。

地下室をフルに使った書庫は、まさに岡崎さんの頭脳内部に入った、という印象だった。脳ミソのように入り組んだ本棚には、シナプスで繋がれた脳細胞(本)がぎっしりつまっている。

私は徹夜明けとうれしさのあまりボンヤリしてしまっていたので、どうにもキレのない発言をして岡崎さんの苦笑を買ってしまったような気がする。岡崎さんと海ねこさんが会話している時にも、猫のマシロちゃんと遊んでいたり、岡崎さんのスリッパあったかそうだなーなどと考えていたりして。海ねこさんがライターの視点でしっかりまとめてくださっているので、詳細は「ねコラム」ブログでご覧ください。猫のマシロちゃんが写った、書庫の写真がとてもいいアングル。
http://www.omaken.com/umi-neko/archives/004196.html

帰り道、興奮冷めやらず、ブックステーションに寄ってセドリ。まるで任侠映画を見たあと、妙に威勢が良くなってしまった人みたいだ。隣りにあるマクドナルドで今後のことを海ねこさんと話し合う。やるべきこと、やりたいことが山積みだ。「私は私の風邪をひく」は師匠の言葉。今日のことをじっくり噛みしめて、自分に立ち返る。

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師匠の“脳内”の一部
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2005年12月10日

■立ち飲みと古本即売会

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高円寺にある古本酒場コクテイルにて、「立ち飲みと古本即売会」に参加。コクテイルの狩野さんは阿佐ヶ谷在住で、元我堂で本を買ってくださったこともあるそう。ご縁があったのだ。ありがたいな、としみじみする。

小型スーツケースいっぱい(約70冊)本を詰め込んで、朝9時50分頃、高円寺へ。一箱古本市でもご一緒だった古書桃李の寺田さんがすでにいらしていて、他の参加者も次々集まり、10時から搬入。

お酒が並んだカウンターの上に本を並べる、と説明にあったが、実際に並べるとなるとちょっと勇気がいる感じ……ビビッて入り口横の本棚に並べさせてもらう。あとで思ったのだが、飲みながら本を見てもらうのが主旨だから、やっぱりカウンターの上に並べればよかった。

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カウンター上、オヨヨ書林さんの本。昨夜は山口正介さんのトークショーがあったが、見に来ることができず。私も山口瞳本を放出しようかと思っていたが、やはりプロには敵わない。『洋酒マメ天国』もたくさん出ていた。

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古書桃李さんは200円均一。飲みながらヒョイと手に取りたくなる品揃え。

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西荻窪の音羽館さんはCDを出品。キャラクター付きの箱がかわいかった。

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私は酒と食の本を。ちょっと狙いすぎたかも。

10時半、本を並べ終えてから西部古書会館へ。ここで先日明治大学の古本講座で友達になったコウノさんと待ち合わせ。岡崎武志さんから“古本版おぎやはぎ”と命名されたメガネ女子2人。モノトーンもしくはセピア色につつまれたおじさんにまぎれて即売展を動き回る。

野上丹治・洋子・房雄作品集『つづりかた兄妹』(理論社/1958年)の裸本、岡田喜秋監修『橋づくし 歴史・美術ガイド』(みずうみ書房/1987年)、沖縄タイムス編『おばあさんが伝える味』(沖縄タイムス社/1980年)、楠本憲吉他『わらべ唄の旅 良寛・一茶のふるさと』(毎日新聞社/1973年)など5冊購入。

荻窪に移動し、昼食に丸長でつけそばを食べる。並びのささま書店均一で5冊。佐多稲子『ひとり旅ふたり旅』、河野多恵子『私の泣きどころ』など。

次にカフェギャラリーひなぎくで開催されている「海月書林 冬の古本市」へ。古本版おぎやはぎは、どちらかというと乙女成分よりもオヤジ成分濃く、はたして海月さまの乙女な雰囲気から浮き上がってしまったらどうしよう、と思っていたのだが、ひなぎくの渋めな内装と、元我堂にも通じる薄暗さに妙に落ち着いてしまった。ケーキセットなどいただきながら、古本を眺めつつ40分ぐらいおしゃべり。むー。ええなぁ。こんなお店を持ってみたいものだ。本もさすがな品揃えでございました。

荻窪駅に戻りつつ、せっかくだからとブックオフにも寄る。2冊購入。林芙美子『めし』、阿刀田高他『お笑いを一席』(いずれも新潮文庫)。

さらに再び高円寺に戻り、コクテイルへ。元我堂の木曜店長しんごさんも来て、3人で立ち飲み。といっても私は下戸なのでビール1杯だけ。つまみに大正コロッケ(壇一雄『壇流クッキング』より)をオーダー。とても細かいパン粉の衣で、中味がふわっとした食感でおいしい。実は『壇流クッキング』を出品していたのに、このコロッケの記述は全然頭に残っていないのだった。

そこへ突如、岡崎武志さん登場。すわ、ついにコント披露か、と緊張が走る。そうなったら江戸時代の人みたいに、ワー!と言って両手を上に上げて逃げよう、と密かに思う。しかし岡崎さんは我々を見てうれしそうに笑ってくださり、それ以上のツッコミはなかったので助かった。

そのあと近くのカフェ「ハティフナット」に移動。一日中動き回ったが、疲れよりも楽しさが上回った。あとは本が売れるといいが、どうだろうか。
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2005年12月07日

■謎の古本屋

我が家から吉祥寺へ行く途中に、長いこと気になっていた店がある。西荻窪から北へ、東京女子大のある“女子大通り”沿い、地蔵坂上に、古ぼけた木造平屋建てのクリーニング店があるのだが、ときどき店先に本が並んでいるのである。あれっ、と思いながら何度も車で通り過ぎていて、今日こそ覗いてやろうと覚悟を決めて行ってみると、トタンの板で囲われていて見ることができない。通るたびにまじまじと見るのだが、気にしだすと、本は見えなくなっているのである。どう見てもクリーニング店なのに、なんなのか!

と、少々癪に障っていたのであるが、今日、まんまと本が並んでいる現場を押さえた。

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店先にある本はすべて100円。屋内にも棚があるのかと思っていたが、段ボールや家財道具のようなものがたくさん積み上げられた倉庫のようになっている。クリーニング店のカウンターとはガラス戸で仕切られていて、元々古本屋だったのがクリーニング業務を始めたのか、はたまたその逆なのかは定かでない。

店先の棚を隅々まで見る。日焼けしたり、時々雨ざらしになったのか、紙がカピカピになった背表紙の本が多い。戸板康二『ちょっといい話』文藝春秋社(1978年)、木下順二『ドラマの世界』未来社(1973年)、谷川俊太郎『うつむく青年』山梨シルクセンター出版部(1972年)、獅子文六『父の乳』新潮社(1968年)など10冊拾う。

ガラス戸を開け、店の奥で炬燵にあたって新聞を読んでいたおばさんに声を掛ける。10冊分1000円を支払って、
「あのーこちらは古本屋さんなんでしょうか」
と聞くと、
「そうですよ」
と自信満々な即答。
「あんまり開いてないですよね」
「うーん、そうねぇ、風の強い日とか、雨の日は閉めちゃうわねぇ」
「はぁ、また来ます」
……おもしろすぎ。

家に帰ってから、野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』を見ると、杉並区・西荻窪の項に、この店<かんばら書房>が載っていた。クリーニング店兼業、とちゃんと書いてあった。

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本はクリーニングしてない
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2005年11月19日

■古本コント結成か

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明大の教室から見える景色。右奥には東京ドームが見える

明治大学アカデミィ・コモン講座「古書の世界・6」第4回目。師匠が買った本の実例は、堀内神泉「恐ろしい因果物語」(大正10年)、ワイドショーなどない時代に、嫁姑の話など、女性週刊誌的なハナシがたくさん出てくる。何の役にも立たないくだらなさが面白いという。それから以前sumusでも特集された、古本に挟み込まれていたモノのファイルを見せていただく。本を読みながら、栞代わりに使う切符、チケットの半券、レシート、ハガキ、切手シート、そしてお札が挟まっていることもあるそう。いいなーそれ。古本がタイムカプセルになって、何十年か前の紙切れが現代にやってくるのだ。

今日のゲスト講師は青山にある古書日月堂の佐藤真砂さん。大岡山で始めたお店が南青山に移転する経緯や、渋谷パルコ・ロゴスギャラリーでの「ムラカミ家のモノに見る昭和史」や「印
刷解体」のイベント企画、パリでの買い付けのお話など、興味深いことをたくさんお話くださった。着眼点と企画力が非常に優れた方。爪の垢を煎じて飲ませていただきたい。すれば自分も次々浮かんでは消えるアイデアを、1つぐらいは実行できそうである。

講座終了後、モジモジしている私に岡崎さんの方からお声を掛けてくださり、佐藤さんや他の生徒さん8名で明大の学食へ。学食は誰でも利用できるそうだ。日替わり定食やうどん、そばなど、たくさんのメニューの中から、“肉団子スープ定食”420円を。自己紹介などもしつつ、1つのテーブルに座っておしゃべりをしながら楽しく食べた。

その時となりに座ったKさんという女の子としゃべっていたら、岡崎さんやみなさんに、「2人は友達だったの?」と聞かれる。Kさんとはもちろん初対面で、朝、お互いに中央線の電車の中で見かけていて、その人が教室にいたので「あれ?電車で一緒でしたよね?」と言い合った。なにかご縁があるようで、彼女は私の通っていた学校がある街に、子供の頃から住んでいるとのこと。きっとどこかですれ違っているのだ。さらに先日、アンダーグラウンドブックカフェで行われた黒船レディと銀星楽団のライブも見に行っていたそう。知らず同席していたのであった。不思議なり。メールアドレスを交換する。

岡崎さんからは、「2人でコンビ組んで、コントでもやったらどう?」と言われ、調子に乗って「じゃあ岡崎さん台本書いてください」などと答えてしまう。そんな面白キャラに見えたのでしょうか。恥ずかしがり屋で、とてもそんなキャラじゃないんですってば。まかり間違ってどこかでコントをやる羽目にならないよう祈ります。

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昼食後、岡崎さん引率にて南部古書会館、古本の即売展「五反田遊古会」へ。師匠と一緒に古本を見るなんてすごいなぁーと、密かに感動しつつ。相方(?)のKさんは五反田は初めてとのこと。ゆっくりじっくり棚を見ていく。1階で7冊、2階で3冊購入。

『かくし芸のど自慢』創学社刊(昭和40年頃?)
『土鈴 −収集の旅−』山本鉱太郎 保育社カラーブックス(昭和53年)
『封印作品の謎』安藤健二 太田出版(2004年)
『赤瀬川原平の今月のタイトルマッチ』ギャップ出版(2000年)
『本棚が見たい!』文・川本武 ダイヤモンド社(1996年)
『同人雑誌入門』森下節 仙石出版社(昭和46年)
『片乞い紀行』古山高麗雄(昭和50年)
『硝子障子のシルエット 葉篇小説集』島尾敏雄 創樹社(1977年)
『酒、男、また女の話』池田弥三郎 有紀書房(昭和41年)
『夫婦百景』獅子文六 新潮社(昭和33年)

シメに近くのフレッシュネスバーガーでお茶。岡崎師匠が買った本を見せていただく。澁澤龍彦が編集した雑誌『血と薔薇』創刊号が難有りで1050円(状態良ければ5、6000円はするとのこと)、岩波写真文庫『写真』木村伊兵衛・撮影が100円など、一同そんなのどこにあったの、てな感じで、やっぱり眼力が全然違うのである。まだまだ修行の日々は続く。
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2005年11月12日

■昭和30年代の本

明治大学にて『古書の世界6』第3回目の講座。はじめに、岡崎さん所有の古書を回覧しながらの解説。これが毎回楽しみ。新刊の本屋さんで売っていないものとしては、肉筆もの(色紙、原稿、手紙、日記)、アルバム、スクラップブックなどがある。私はそういうものを買ったことがないので、実物を興味深く見た。(あ、そういえば9月に南陀楼さんから戦前マッチラベルのスクラップを買ったことがあったのでした)

思い入れたっぷりに、丁寧に作った新聞の切り抜き帖などは、ちょっと滑稽なまでの生真面目さが感じられて面白かった。個人の日記やアルバムは、本棚の本に紛れて古本屋に流れてきてしまうのだろうか。自分の日記が、50年後に古本屋で売られていたら……ああこんな人がいたんだなぁと誰かに思ってもらえてうれしいのか、それとも恥ずかしいのかわからん。

今日のゲスト講師は、古書店「なないろ文庫ふしぎ堂」店主で、古本雑誌「彷書月刊」編集長でもある田村治芳さん。田村さんが若い頃、金子光晴にファンレターを出したら、丁寧な内容の返事が来たそうである。その後古本屋になり、その手紙を売ってしまったというのが可笑しい。これは身の回りの無名な人が、何を持っているかわからない、以外なところにすごいものが眠っている、という話。また、古本屋さんの現状についても詳しくお話してくださった。

業者間の交換会(市場)では、雑誌の付録、ブツは高い。古い車のカタログも人気があるそう。昔の電気製品の取説(取り扱い説明書)などはもし家に残っていたらとっておこう。いずれも昭和30年代頃の文化を知ることができ、デザインの面でもよい資料になる、とのこと。

講座のあと、今日は古書会館の即売展「愛書会」へ。場違いだったらどうしよう、とちょっとドキドキしながら地下への階段を降りると、会場の中も帳場も人がわさわさ動いていてビビる。見るだけ見てみようとクロークに荷物預けていざ。

ゆっくり見ていたら、おじさんに体当たりをくらった。他にも人を押しのけたり鞄をぶつけたり。なんか、妙に焦ってるんだよなぁ、おじさんたち。古本を前に我を忘れてしまうんでしょうか。怖いです。でも、めげずに棚を見ていく。購入した本は下記の通り。

■『美しいキモノ/61集別冊付録 染・織どくほん』
婦人画報社 昭和43年
付録とは思えないほど充実した内容。モデルには若き日の乙羽信子、倍賞千恵子、三田佳子、池内淳子などの姿が。

■『百万人のドライブガイド 東日本』
元文社 昭和38年
今日の講座で田村さんが車のカタログの話をしていたので、昭和30年代のドライブってどんなだ?と興味を持って見たら、車のデザインはもちろん、乗っている人のファッションもいい感じ。峠道のコースに掲載されている写真は、舗装されてない今にも崩れそうな崖だったりしてすごいものがあります。

■『8ミリの写し方』栗 敏雄
金園社 昭和41年
撮影・技術・録音・特撮・編集までを詳しく解説した424ページの分厚い実用書。今、中古で8ミリカメラを買う若者が結構いるみたいですね。

■『奥さま散歩』
朝日新聞家庭部編 朋文堂 昭和35年
この本、だいぶ前に元我堂で売ってしまって、ずっと探していたのでした。しかも!本の内容に合わせて新聞記事(昭和38年)とか、お店のチラシ、メニューの紙がたくさん挟まっています。今日の講座の新聞スクラップとちょっとかぶっていて満足。

■『下町手帖』辻野透
文化総合出版 平成2年
こころ惹かれました。読んでしみじみとする本。

■『飲み食ひの話』獅子文六
河出書房 昭和31年
装丁:芹沢けい介(けいは金へんに圭)
「タノシミは、飲むことと、食ふこと」読むのタノシミ。

■『随筆集 酒』獅子文六ほか
六月社 昭和32年
題字:幸田露伴 装丁:大久保恒次
奥付に「甘辛社」の小紙が貼ってあるので、「あまカラ」に掲載された文章をまとめたもの?

■『現代豆腐百珍』辻留 辻嘉一
婦人画報社 昭和37年
装丁:佐野繁次郎
湯豆腐をおいしく作るには、少量の塩を入れた白湯が煮立ったところに、3.5cm四方に切った豆腐を静かに入れ、「ただ、じっと見ていて、浮き上がる直前を掬いあげればよいのです。上手下手の問題でなく、注意力の強弱で決定されるのです。」四季折々の豆腐料理と、さまざまな調理法。

以上、8冊購入。古書会館を出て、三省堂の方へ歩きはじめたら、向こうから岡崎武志さんが!明治大学の教室ではなんとなく声を掛けそびれていたので、ここぞとばかりに話しかけてしまった。一箱古本市で賞をいただいたことも覚えていてくださって、かばんから先日100円で拾った新学社文庫『さざなみ軍記 他二編』(井伏鱒二著、新書だけど棟方志功の装丁)を見せたりしてしまう。まるで飼い主に獲物を見せる猫のよう。恥ずかしいよー。失礼しました。

そのあと古書センターでも3冊購入、天ぷら「いもや」にて昼食、天ぷら定食(いも追加)700円也。来週も講座が楽しみ。
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2005年11月05日

■富士見台・新井書店のこと

本日も寝ずに朝10時半、明治大学。岡崎武志さんの古本講座、第2回目。2回目からは岡崎さんの他にゲスト講師がいらして、今回は『ミステリーファンのための古書店ガイド』(2005年/光文社文庫)の著者、野村宏平さん。野村さんは“古本界の間宮林蔵”と言われているとか。日本全国、津々浦々の古書店を自分の足で探し歩いている。

この本は私も新刊で購入していたのだが、新古書店、貸本屋、古書組合に非加入の店、はたまたクリーニング屋なのに古本も売っている店までも地図付きで紹介しているディープなガイドブックで、ミステリーファンでなくても便利でうれしい1冊なのだ。もちろん杉並区阿佐ヶ谷の項に元我堂も載っており、「サブカル関連が充実した」と書かれている。(今はちょっと違う…前の店主の時代にいらしたんだろうか。)

タウンページで下調べをし、交通機関のフリーきっぷやレンタサイクルなどを上手に使いながら、貴重な本がひっそりと埋もれているかもしれない地方都市の古書店を訪ね歩く。北海道や沖縄の古書店めぐりもすごいが、個人的に特に感心したのは、私が住んでいる町の最寄り駅である西武池袋線・富士見台駅周辺で、唯一、かろうじて現存する古書店、新井書店がきちんと紹介されていることであった。

数年前まで、富士見台駅前には山本書店という、チェーン系の古書店があって、なかなかの品揃えだったが閉店してしまった。そして駅から西へ5分ほどのところにあった新刊書店も閉店。これで駅周辺には徒歩で立ち寄れる書店はなくなり、富士見台の文化レベル地に落ちたり……と落胆していたところ、姉からの情報で、駅から北方向に伸びる商店街の端っこで、細々と営業している古本屋があると教えられた。それが新井書店である。うかつにも富士見台在住7年目にして初めて知った店であった。早速、店を見に行った。

荒物屋と和菓子屋に挟まれた、間口1間半の小さな店で、まだ明るい夕方なのにシャッターが半分降りている。表に均一台が出ているわけでもなく、これでは長年見逃していたのも無理はない。今日は定休日なのかと思って翌日出直すと、やはり同じように半分シャッターが降りていて、薄暗い店内に女の人が立っていたので、思い切って「お店はこれから開くんでしょうか?」と聞いてみた。その人は店の奥に向かって、「おじいさー
ん、お店開けるんでしょ?お客さぁーん!」と大声で言った。すると店の奥の茶の間から、80歳は当に過ぎていると思われるおじいさんが出てきて、嗄れ声で「はい、どうぞぉ」と言って店の蛍光灯をつけてくれた。

女の人はどうやら近所の商店の人のようで、私と入れ替わりに店を出ていった。静かな店内に私とじいさんの2人きりである。ちょっと気が引けたけれど、何か掘り出し物の本があるかもしれないと思い、棚を端から眺めていく。その間、おじいさんは店と茶の間の間の入り口に立って、じぃーと、じぃーーーーと私の一挙手一投足を見ている。ものすごく見ている。痛いほど見ているのである。(こわい…)と心の中でビビリつつ、万引きだと思われないよう明快な仕草を心掛け、とにかく早くなにか1冊でも買って店を出ようと必死に棚を見ていった。

棚にある本も、床に積んである本も、長年誰も動かしていないのか、背表紙は焼けを通り越して白くなり、紙がカピカピになっている。小口には埃が積もっている。文芸書、エロ本、旅行ガイド、マンガなどが雑多に積み上げられている。以前はどこかの古書展にも参加していたのだろう、新井書店と名前の入った値札のスリップが見返しに糊でつけられている本もある。

そんな本の山の中から、『こんにちはチーズ』(雪印乳業発行の非売品本/昭和50年発行/表紙とイラストが大橋歩)、田中健三『カラーブックス インテリア』(保育社/昭和46年)、佐藤哲也『カラーブックス コーヒー入門』(保育社/昭和52年)など7冊ほどを見つけ、おじいさんの元へ。「おねがいします」と言うと、「あぁ?」と言う。耳が遠いらしい。もう、ドリフのもしもシリーズみたいになってきた。もしも、こんな古本屋さんがいたら……いかりや長介の声が聞こえる。

おじいさんは渡した本をゆっくり1冊1冊見て、見返しにエンピツで書いた値段を確認していく。私も一緒に見て、暗算をする。おじいさん、1400円だね、と心の中で思って、おじいさんの言葉を待つ。「…………」はっ、計算できてない?また最初から1冊ずつ値段を確認している。電卓とかそろばんとか、ないのか。また「えーと、えーと300の300の600の……」と悩んでいるので援護する。「300の300の600で1200、あとこれが200だから1400円ですよね」「ああ、ああ、そう、そだね」とようやく納得してくれる。

大丈夫だろうか、おじいさん。なにか私にできることはないだろうか。こうして時々、本を買いにくるだけでいいのだろうか?表に出ると一転して賑やかな商店街、富士見台最後の文化の灯、新井書店が心配になる帰り道であった。
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2005年10月29日

■古本はいま、いちばんおもしろい!

午前10時半より明治大学リバティ・アカデミー(社会人講座)にて、岡崎武志師匠による講座『古書の世界6』へ。

昨晩、深夜まで元我堂を開けていて、帰宅後は寝てしまうと寝坊する恐れあり、よって寝ずにお茶の水へ向かう。受講前に明治大学の11階で受付を済ませよ、との指示が前もって郵送で送られてきていたので、エレベーターで11階に向かう。

エレベーターを降りると「受付」があり、数人のスーツを着た男女が立っている。名前を告げると男の人が受講者リストを見ながら、「金子さん、金子さん、金子さん…………あのー、お名前ないんですけど……」と言う。「え?でも、あの、ホラ、この案内が」と、郵送されてきた受講案内を見せる。すると「あ、これは別の建物でやっている講座ですね、こちらは比較文化研究会の学生講座です」ひゃー。間違えて“リバティ・タワー”に来ていたらしい。あわてて走って“アカデミー・コモン”という建物へ。結局それで5分遅刻する。(なんのために寝ないで来たんだか)

教室に入ると、明治大学の職員(?)の方が、施設についての説明をしているところだった。師匠の話を聞き逃さずに済んでよかった。落ち着いて教室を見回すと、受講者は30人ぐらいいて、ずいぶん年輩の方が多い。中には古書店の方や、出版社の方もいるとのこと。

一箱古本市以来の「生」師匠だが、昔は教師をされていたそうで、ホワイトボードを背に話す姿がとても様になっていらっしゃる。「古本はいま、いちばんおもしろい!」その理由を、ご自身で買った本の紹介を交えながら楽しく話していく。カビくさい、むずかしい、汚い、高い、そんなイメージの古本が、現在どう変わってきているのか。古本販売のスタイルの多様化について。売り手にも買い手にも女性が増えてきていること。岡崎さんが集めている本のジャンルについて。知識を凝り固めるのではなく、頭を柔軟にして古本を見る。自分なりのテーマを見つけることで、新しい世界が広がる。などなど。

隣りの席のおばさま(うちの母ぐらいの年代の方)、回覧されてくる本を見ながら「あら〜これ私も持っていたわ〜、こんなもの価値があるなんて思わないものねぇ〜、あらぁ、捨てちゃったわぁ。うふふ。」などと感心しつつ、楽しそうな様子。

1時間半があっという間に過ぎて、受講者のうち数人の希望者は、このあと岡崎さんと一緒に神保町の古書店と古本まつりを回るツアーに参加。私は眠くてお腹が減ってフラフラ。一人でお昼を食べてから神保町へ。古本まつりのワゴンを見始めると雨がパラパラ降ってきて、屋外のワゴンはみなシートを掛けられてしまった。でも講座の余韻を楽しんでナニか買って帰りたいので、小宮山書店のガレージセール(3冊500円)へ。

『西洋の詩を読む人に ポエム・ライブラリィ4』(東京創元社/昭和31年)、茨木のり子編『金子光晴詩集』(弥生書房/昭和42年)、井伏鱒二『黒い壺』(新潮社/昭和29年)の3冊を購入。『西洋の詩〜』は、カバーのお魚の絵と手書き文字に引かれて手に取ると、装丁が花森安治だった。『黒い壺』は早速読んでみたら面白い。収録されている「艶書」という短篇は骨董の話だが、そういえば昨日、秦秀雄『忘れがたき日本の味』という本を買っていて、この人は井伏鱒二『珍品堂主人』の主人公のモデルになった人との由。読まねば。

夕方、阿佐ヶ谷に移動。このあの文庫で借りていた本を返却したのち、5時からバルトで「黒船レディと銀星楽団」のライブを見る。28、29日の2日間は「阿佐ヶ谷ジャズストリート」というイベントが行われており、阿佐ヶ谷のいたるところで無料、有料のジャズライブが見られる。

さて、黒船レディは今夜も満面の笑みと歌声で、我々を幸せな気分にさせてくれた。ソルトリバー伯爵がコーラスをした曲もかわいかったし、「古本屋のワルツ」はやっぱり何度聞いてもよい。フレンチポップスっぽい新曲「パティシエ」も披露。次はどんな曲かとワクワクしながら楽しませていただく。(この日の様子はもんごメモにも。)

その後、ライブに来ていたMongoさん、海ねこさん、このあの館主人とその友人、計10名でタイ料理ピッキーヌへ。古いアパートをレストランにしてしまったような造りで、知り合いの家で晩ご飯をいただくような雰囲気の店。唐辛子系の辛いものが苦手な私でも、おいしく食べられる本格タイ料理だった。カニが甲羅ごと入ったカレーなんて初めて。自分で巻く生春巻きも美味。いくら10人でもちょっとオーダーしすぎ?っていうぐらいの料理が出てきて、食べ残しは袋に入れて持ち帰る。今日は長く、充実した一日。
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2005年10月28日

■神保町古本まつり

神田神保町古本まつり初日。2年前のこの古本まつりで、わけもわからないまま両手いっぱい本を買い込んだことがきっかけで、今の古本生活があるのである。それまでは時々古本屋も覗くけれど、本はほとんど新刊書店で買っていた。古本に目覚めた、記念すべき古本まつり。さて少しはこちらの見る目も成長したかしら、と棚にかじりつく。

奥村敏明『文庫博覧会』(1999年/青弓社)は自分の勉強のために。松平誠『駄菓子屋横丁の昭和史』(2005年/小学館)、川本三郎『東京万華鏡』(1992年/筑摩書房)、田河水泡『のらくろ自叙伝』(1976年/光人社)、石塚公昭『乱歩 夜の夢こそまこと』(2005年/パロル舎)ほか15冊購入。自分の興味の赴くまま、大量の本の中から「コレハ!」と思う本を見つけだす喜び。ありがとう、神保町。
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2005年10月17日

■今日も古書会館

黒船レディの柿
▲黒船レディからいただいた富山の柿

発送を終え、夜、再び古書会館へ。今日はアンダーグラウンドブックカフェ初の企画、古本に囲まれてのライブ。出演の「黒船レディと銀星楽団」はボーカル、ピアノ、ギター、ベースの4人組。実はボーカルの黒船レディこと水林史さんと、ピアノのリリー婦人こと廣田ゆりさんはお2人で金曜日の元我堂へ来てくださったことがある。お2人とも本がお好きな様子で、店内を隅々までじっくり見て、何冊か本を買っていかれた。その時にお話を聞いて、この日のライブを楽しみにしていた。

黒船レディは笑顔のとてもかわいい方なのだが、その表情と共に歌声にも聴く者を幸せな気持ちにさせる力がある。NHKの「みんなのうた」で一番好きだった、大貫妙子の「メトロポリタンミュージアム」を思い出す。歌い方も少し似ているかも。

古き良きジャズスタンダードあり、日本語訳をつけたカバー曲あり、オリジナル曲ありで楽しめた。代表曲『古本屋のワルツ』はピアノのリリー婦人が古本屋でピアノを弾いている夢を見たことと、黒船レディが友達から借りた本を電車に置き忘れて、同じ本を古本屋で探し回ったことからイメージが生まれ、作られた曲とのこと。1曲ごとに、思い入れやエピソードを丁寧に語っていくのもよかった。5曲入のCD(1000円)を購入。元我堂でBGMにかけます。

終了後、同じくライブに来ていたこのあの館主人小宮由さん、海ねこさん、Mongoさんと共に阿佐ヶ谷へ移動し、沖縄料理の店へ。12時近くなって、ナンダさんも合流。中央線終電ギリギリまで。

沖縄そば
久しぶりの沖縄そば、おいしかったー
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2005年10月16日

■地下室の古書展Vol.6

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古本のことになると早起きができるのはこれいかに。本日より3日間開催される神保町古書会館「アンダーグラウンドブックカフェVol.6」へ。

今回は重大な(?)任務あり。この古書展の企画をされている神保町の西秋書店さんより、会場に元我堂のチラシを置いてもよいというありがたいご提案があり、今回初めて元我堂を紹介するフリーペーパーを作ったのである。それを古書会館まで持っていくのが私の役目。

お忙しい西秋さんをやっとつかまえて、我らが元我堂のフリペは無事、催事告知や本の宣伝など各種チラシにまぎれて平台に設置された。本当に有難い。古書好きそうなおじさま方や、若い女性の手に取られていくのをしばし眺めていた。このうち何割の方がお店まで来てくださるのかはわからないが、面白い店だなと思っていただければいい。ちなみに中はこんな感じ。

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店内のイラストは水曜店長、ナンダ画伯によるもの。左下にはこっそりフレンチブルドッグのスタイプ店長も描かれている。

古書展では西秋書店さんで5冊、かげろう文庫さんで戦前の裁縫本2冊購入。写真は婦人倶楽部『新案もの小物裁縫百種』。この中に、旅猫で売っている湯たんぽ袋とほぼ同じものの作り方が出ている。(ただし戦前にはキルティング生地はなかったので、生地と布団わたを合わせるところから始まる)

お昼頃に月曜店長nonさん、火曜店長石ころさんと合流。すずらん通りのオーガニックレストラン「マザーズ」で食事。
http://www.mothers-net.co.jp/202kanda.html

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バイキング形式のランチで、根菜を中心に、蒸し野菜、和え物、サラダ、シチューやカレー、デザート、コーヒーなどもあり、ごはんは玄米と雑穀の2種類がある。全体に薄味(江戸ッ子にはちょいとモノ足りないが)で、日頃野菜不足の方にはおすすめ。おかずは2度、ごはんは1度おかわりした。1200円也。

食後、予定がある2人と別れ、神保町をぶらぶらしようと思っていると、古本海ねこさんからメール。これから古書会館へ向かうとのこと。そのあと元我堂木曜店長のナンダさんからも電話で、もうすぐ古書会館に着くという。2人が着くまで、三省堂裏にある古書モールを見ることに。

棚を見ていると突然グラグラと地震。レジにいた店番の女性が、「本棚から離れてくださーい」と言うのだけれど、どこに立っても本棚だらけだってば!別の男性が冷静に「みなさんエレベーターホールの方にいてください」と言って集まった頃にはすでに地震が収まっていた。本で生き埋めになった場合、少しの隙間と明かりがあれば救助されるまで暇つぶしはできそうである。

再び古書会館。ナンダさん、海ねこさんと合流し、西秋さんやリコシェの阿部さんとお話する。最後に森井書店さんで本を1冊購入。よくしゃべった一日。
posted by 店主かねこ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | □古本のこと | 更新情報をチェックする
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